#インタビュー記事作成のマイベスト 当日編 (山越の場合)

「#インタビュー記事作成のマイベスト」2本目は、いよいよインタビュー当日について書かせてもらいます。

その前にちょっと失礼して、インタビュー愛を叫びますね。

なんと言ってもインタビューの魅力はそのライブ感。
聞き方次第でどんなお話が聞けるのか全然違ってくるあの不確かさや絶妙な緊張感、たまらないですよね。
そんな場所で聞き手として物語の舵を取ることができるなんて。

これ、イベントのモデレーターさんとも少し似ていると思うけど、それよりもきれいごとじゃない本音も、インタビューの場でなら聞けちゃう。

だから当日は、どこまで相手にワクワクしながら話してもらえるかに命をかけてます。
いつも目指してることはインタビュー対象の方に「こんなに話したのは初めて」と思ってもらうこと。

取材の最後に「なんだか支離滅裂に思いつくまま喋ってしまったけど、大丈夫ですかね?」と聞かれるとすごく嬉しくなっちゃいます。

「思わず喋っちゃう」そんな空気を作るのが聞き手である私の仕事だと思うのです。
どうか好きに喋って。それをうまく導けるように頑張るので。そんなきもち。

では恐れ多いですがまとめていきます!
インタビュー当日の「マイベスト」

インタビュー当日のやることリスト

前回の準備編同様、インタビュー当日にやっていることをまとめてみました。

いろいろ洗い出してみたところ、ざっくりこんなかんじです。

やることリスト
・取材対象者、編集者が安心する恰好で
・5分前到着は遅刻だと思っておく
・心を通わせる導入を
・メモの時間を捨てても、絶対に目を見て話を聴く
・質問背景も丁寧に伝える
・心を開くのはいつでも自分から

インタビューはタスク的な仕事じゃなくて、「人と人の心が通う対話」として取り組んでいたいなと思っています。

だってもしも自分がインタビューをされる側だったら、あれやこれや根掘り葉掘り聞かれて、それを他者に文章にされて、しかも世に出されるってなかなか大きな出来事だもん。

せっかくなら「色んな人に読んでもらいたい」って当人に思ってもらえる記事を作りたいです。
そして、そのためには話し手の方の本音や、ご本人も自覚していなかった根底の想いが掘り出せたら最高。

だけど取材対象者の方と私(聞き手)に与えられた時間は、ほんの1、2時間しかないこともしばしばです。
「初めまして」からそんな短い期間で本音を引き出すには、とにかく信頼してもらうしかなくて。

ということで、今回まとめた「やることリスト」は、相手に信頼してもらいながら話を聴くために気をつけていることかもしれません。

では、それぞれ解説させてもらいますね。

取材対象者、編集者が安心する恰好で

これって意外と忘れがちだと思うのですが、服装が与える第一印象は、その後の現場の雰囲気を作っていくためにめちゃくちゃ大事だと思います。

上場企業のオフィスに行くならジャケット着用だし、女性誌の取材ならマニキュアが剥げた爪はご法度だし、
工場潜入ならヒールのある靴は履かない。

TPOにはしつこいぐらい気を遣てっいいんじゃないかな。

これは制作会社時代にしっかり教えてもらったことなので、今でも感謝してます。
「きちっとした服装のインタビュアーは、ちゃんと話してもらえる。だらしない格好で出向いて、『こんなアホそうなやつには話しても無駄だ』と思われないように」っていう精神が身につきました。

反対に、ファッション性の高い現場でただただフォーマルな服装をしているのも野暮で、要は記事と一緒で現場のトンマナに服装を合わせる努力をしたいなと思ってる。

そういう意味では服装は信頼のツールなので、コスプレ感覚で、そのときどきの現場の雰囲気を楽しんでいたいです。

5分前到着は遅刻だと思っておく

もっと具体的に書くと、以下のことを取材スタートまでにやれたらいいなと思っているからです。

取材開始までにやりたいこと
・現場の空気感に馴染む
・イメージカットに使えそうな場所を軽くロケハンしておく
・たとえ1分しかなくても、編集者さん、フォトグラファーさんと直前のすり合わせをする

取材開始時間が午後だったりして、「それまでどこかで作業してようかな」と思ったときは、現場の最寄り駅までとりあえず行ってしまうのがマイベストです。

さらに、取材先がどんな場所なのか一回把握したあとで、近くのカフェとかで仕事していると慌てません。

編集者さんがトラブルで遅れてしまうことってけっこうあるので、「代わりにロケハンしておきますね!」とか言えたらナイスです。

そして、現地に余裕を持って到着すると、現場に行く前にスタッフ陣で軽くすり合わせをすることができます。

取材が始まってから、対象者さんの前で「あれどうしますかこれどうしますか」って話すことにならないためにも、取材終了までのおおまかな流れはスタッフ陣のみで事前共有しておきたいところですよね。

心を通わせる導入を

いよいよインタビュー開始!となったら、何はともあれ最初のコミュニケーション(導入)で相手の懐に入ることが最重要です。
そのために個人的に気をつけていることはというと…

導入で気をつけること
・挨拶は元気に
・メディアの説明、取材の趣旨、どんな話をしてほしいかを筋道立てて説明
・おしりの時間を聞いておく
・アイスブレイクに大事なのは話題のネタ振りよりも「表情と雰囲気」

挨拶は大前提として、メディアの説明を編集者さんではなくライターの自分がする感じの空気になることって意外と多いので気が抜けません。

だから、初めて書くメディアならなおさら、取材前にコンセプトやABOUTをもう一度チェックしておくようにしています。
それから、取材対象者の方がなぜ今回選ばれたのか、どんなことを求めているのかを最初にきちんと説明しておくことも大事だなと最近思います。
話す側としても、何が求められているのかが明確だと話していて安心しますよね。

それから、嬉しいかなインタビューが盛り上がってしまって予定の時刻がオーバーしそうなときもあるので、「だいたい◯分くらいお時間をいただきたいのですが、この後のご予定などは大丈夫でしょうか?」と聞くようにもしています。

そうしておけば、万が一取材と撮影が押してしまっても「自分で時間は伸びても問題ないって言ったからな」と先方が納得してくれることが多いので、予防線のためにも。

そして、導入において個人的に思っているのが、「アイスブレイクってそんなに大事?」ってこと。
相手に心をほぐしてもらうための雑談って、時として時間の無駄になったり、不自然な流れになったりして逆に誠実じゃない気がしてしまいます。

それよりも大事なのは、きちんとした媒体説明と相手への要望を「めちゃくちゃ感じよく」伝えることだと思う。

ちゃんと自分の目まで笑ってるか。心から相手の話を聞きたいと思っているか。表情豊かにリアクションしてるか。っていうのを、インタビューされる側はけっこう真面目に見ていると思います。

薄っぺらい気持ちで取材に来てる人ってばれちゃうし、真摯に興味を持ってくれてる人には何でも話したくなっちゃうんだってさ。
お父さんが言ってた。(実家が山奥で魚屋やっててよく取材くるんです)

これに関しては次の内容とも重なってきます。

メモの時間を捨てても、絶対に目を見て話を聴く

取材時にメモを取ることに必死になってしまいがちな私ですが、そこは文字起こしに工数を割くと腹をくくることにしたら、最近なんだかいい調子です。

ICレコーダーでインタビュー内容を録音するのはほぼマストで、その代わりに現場ではできる限り対話をするようにしています。

相手が自分の目を見て話してくれているのに、必死でPCをタイピングしてるのは、個人的にあまり好きじゃなくって。
これはもちろん個々のライターさんによって違うので、あくまで「マイベスト」です。

相槌にバリエーションをもたせることも重要だけど、それ以上に「目が笑ってない」ことのほうが問題じゃない?
打ち合わせとかをしてても、そういう人には心を開けないから、自分でも気をつけてます。

あと、インタビュー時の机の上に何を出すのか問題ってありません?特にPC。
私は相手がITリテラシーが高くて、PCを出したほうが安心してもらえそうなときのみ、机に出します。
他のときはICレコーダーとノート、ペン、質問用紙、取材資料だけというのが最近の定番です。

考えすぎかもしれないけど、PCの画面が取材対象者さんとの心の距離を遮っている気がするんですよね…
私はジャンル的に職人さんや一般の方へのインタビューが多いからそう感じるのかも。

質問背景も丁寧に伝える

「なんでこんな質問をしているのか」を明確にすると、取材対象者さんの主張に意志が見えてくる、というのがここ数年での発見でした。

例えば
「いま世間では◯◯が騒がれている一方で、あなた(話し手の名前)は△△な取り組みをしていると思うのですが…その理由はなぜなんでしょうか?」とか。

答えやすいようにやんわりと質問に筋道をしのばせつつも、回答は相手の自由に任せる感じです。

これ、後で文字起こし→記事化する際にも構成が作りやすくなるのでおすすめしたいです。

心を開くのはいつでも自分から

インタビューのお仕事をしていると、ときに「これはなかなか大変だぞ…?」と思うような現場もありますよね。

取材対象の方が照れてしまって話が展開しなかったり、心を開いてもらえずに本質を聞けなかったり…

そんなときには、「どうしたらこの人と仲良くなれるのかな」と考えて、いつでも自分から心を開くことで切り抜けられて来た気がします。

飲み好きのおっちゃん社長には、まるで居酒屋で話しているみたいに自分もちゃきちゃき娘感出してみたり、
博学な教授には「不勉強で申し訳ないのですが教えてください」の姿勢をキープしたり、
不安げな学生さんには温和でちょっとフランクな親戚のおばさんみたいな雰囲気を出すようにしたり。

そして、インタビューの中で疑問に思ったことはできるだけその場で解決するに限ります。
前までは「これを質問してる時間がもったいないから、帰ってから自分で調べよう」と思って流してしまっていたこともあったけど、分からないことはそれこそ心を開いて素直に教えてもらったほうが、次に続く質問が濃い内容になりました。

もちろん、準備不足が原因の「分からないこと」は避けたいけど。

結局「良い現場」っていわれたいけど、それがアウトプットに活きないと意味ない

インタビュー時のことについてライター仲間と話していたときに、「◯◯さんのいる現場って雰囲気いいよね」って言われたらめっちゃ嬉しい、っていう結論になりました。

現場の雰囲気が良いと、良い表情の写真が取れたり、そこから新しい仕事が生まれたりするもんね。

でも、現場の雰囲気を壊さないことに注力しすぎて突っ込んだ質問ができないのも問題です。
何はともあれ、結局はアウトプットの記事が良いものにならないと意味ない。

そう考えると、会ってたかだか1、2時間で取材対象者に信頼してもらうことを重要視してるのは、突っ込んだ質問をしても大丈夫な空気づくりでもあるのかもしれません。

 

良いインタビューができたなと思えるとき、公共の場で音源を聴きながらにやにやしてる不審者はこのわたくしです。笑

さてさて、次回はいよいよ「記事作成〜納品編」です。
そちらも参考になるようにがんばってまとめますね!

ABOUTこの記事をかいた人

ライター・編集者。1991年うまれ。出版系の制作会社に入社後、2015年からフリーランスに。雑誌やweb媒体を中心に記事の執筆・編集を行っている。日本のものが好きすぎて、顔がこけしに似ていることをオイシイと思っているふしがある。