#インタビュー記事作成のマイベスト 当日編 (渕上の場合)

インタビューは準備がすべて、とよく言われる。某新書のタイトルにあやかってか、「インタビューは準備は9割」なんて言う人もいる。あながち間違いではないものの、原稿のクオリティはやはり、インタビュー当日の出来具合に大きく左右されるものだと思う。

念入りに準備するのはテクニックでもなんでもなく、インタビューさせていただくにあたってやらなければならない当然のこと。そういう意味では、インタビュー当日に行いにこそ、インタビュアーの腕前が現れる。本稿では、インタビュー当日のふるまいについてまとめていこうと思う。

記憶力を信じないで、持ち物リストでチェック

出掛ける前にカバンの中身をチェックする……なんて、言われなくても分かってる! でも、そう分かっていても忘れ物をするのが人間で、ぜったいに忘れ物をしてはいけないのがインタビュー当日。自分の記憶力なんであてにせず、チェックリストで管理するくらいで丁度いいと個人的には思っている。

自分のチェックリストには以下の項目がある。

・テキスト・パソコン
・スマホ
・ICレコーダー
・電池
・ノート
・筆箱
・カメラ(バッテリー、メモリーカード)
・質問リスト(前回の記事を参照
・インタビュイーの著書やWeb記事のプリント(前回の記事を参照

入っていて当たり前のパソコンがリストに載っているのは、記憶力を信じていないから。ICレコーダーは電池の換えも用意しておいた方がいい。カメラを持っていく際は必ず、バッテリーの状態とメモリーカードが刺さっているかを合わせてチェックするようにしている。

余裕をもってスタンバイ

場所にもよるが、基本的に開始時間の30分前には現地近くにいるようにしておく。インタビューは相手の時間を拘束するのだから、ぜったいに遅刻しないようにしなければならない。

時間が余ったとしても、喫茶店で質問リストを眺めてデモンストレーションもできるし、スマホでトレンドのニュースを調べておけばアイスブレイクに使えるネタが見つかるかもしれないから、時間を無駄にすることはない。

さらにメンタル的な面でも、心に余裕を持たせるのは重要だと思う。遅刻だったりギリギリで到着してしまったりすると、どうしても焦りが表に出てしまう。これではいいインタビューはできない。

目的をすり合わせる

相手と面向かってインタビューが始まったら、最初の挨拶に合わせて本企画の趣旨を必ず確認したほうがいい。インタビュイーにはいろんな人がいる。趣旨を理解し念入りに準備してくる人もいるが、取り付いてくれた人から「インタビューに答えてくれ」としか伝えられず現場に来る方もいるし、方向性を勘違いしている場合もあるから。

目的がずれたままインタビューを進めて、まともな記事ができあがるとは到底思えない。面倒でも、どんな目的で、誰を読者と想定し、何についてのエピソードを聞きたいか改めて確認してからインタビューを始めるのをおすすめしたい。

アイスブレイクを忘れない

趣旨説明と挨拶を済ませても、いきなり本題には入らず、場を解きほぐすためのアイスブレイクを忘れないように。勝手知ったる仲ならともかく、大抵の場合、インタビュアーとインタビュイーは初対面。そんな人相手にいきなり核心をついた話はできないものだと思う。

個人的に、アイスブレイクは相手にとってメリットのある話をするようにしている。例えば最近出た著書やインタビュー記事、企業であれば新製品などについて。先方にとっては宣伝になるし、しゃべりやすいはず。いきなり人柄について切り込んでいくよりも、こちらが相手に興味を持っていることを示した方が打ち解けやすいと感じている。

ちなみに自分はこのタイミングで、先方の著書やWeb記事のプリントをテーブルに載せたりしている。こちらが念入りに準備してきたことを理解してもらうのと同時に、適度なプレッシャーを与えることができるのがポイントだ。「ああ、きっちり調べてくれてるんだな。これは適当なことばかり話せないな」と感じてもらうことで、インタビュー内容がより色濃くなる可能性が上がると思っている。

話を聞くことに集中する

こうして、ようやくインタビューが始まる。ここまで来たらあとはリストを見ながら話を引き出していくことに注力するのみ。音声は事前にお願いした上で録音しておくので、何もリアル文字起こしする意気込みで臨む必要はなく、基本的には話の中で印象的なエピソードやフレーズをメモしていくだけでいい。

メモすることよりも大事なのは、相手の目を適宜見ながら話をすること。きちんと話を聞いているとアピールすることで、相手に話してもらいやすい環境をつくる。必死に下を向いてメモするよりも、よっぽど重要だと感じている。

そのことから、メモにパソコンを使用するのはおすすめしない。パソコンだとなまじ文字数を打ててしまうことから、目がディスプレイに行きがちだからだ。それに打鍵音は円滑なインタビューの邪魔になる。それゆえに、未だノートを持参してメモしていくスタイルを採っている。

言葉の解像度を上げる

質問は、数多く聞けばいいというものではないと思う。それよりいかに深みのある話が聞けるかの方が大事で、いいインタビュー記事はたいてい濃いエピソードが含まれているものだ。

だから、事前に用意したリストに散りばめられているキーワードをすべて担保する必要はないので、聞き出した話の解像度を上げていくことに注力したい。

例えば抽象的な表現としてよく出てくる「楽しかった」「感動した」「影響を受けた」「成功した」といった言葉。どう楽しかったのか、感動した結果どうなったのか、どんなところに影響を受けたのか、インタビュイーにとって成功とはどういうことなのか。そういったエピソードを聞き出すことで言葉の解像度が上がり、リアリティも増す。

「言葉の解像度を上げる」というのは、インタビューに関わらず編集・ライティングの仕事をする上で非常に重要なことだと思うので、興味のある方は以下の本を読んでみてほしい。どうやって解像度を上げるかが詳しく書かれている。

メモをアップデートする

インタビューが無事に終了したら、その日のうちにやっておきたいのがメモの整理。聞き出したエピソードで重要なのは何だったか、おもしろいポイントはどこだったかなど、記憶が新しい間にメモをどんどんアップデートしておく。

細かいところは文字起こしした後に直せばいいので、この時点では自分の感情に忠実に、ホットな言葉を残していくといいと思う。特に、インタビュイーの感情が動いた瞬間がどこだったかをメモしておくと、後々編集する際に役立つのでおすすめだ。

最後に

以上がインタビュー当日の流れとなる。本記事内では、インタビュー時のメモをパソコンでとるかノートでとるかについて、考え方が大きく分かれるのではないかと思う。実際、スピーディな原稿の納品が求められる場合はパソコンで直接メモをとり、その日のうちに起こした文章を交えて編集してしまうこともあるから。

ここで述べたやり方は自分が6年ほどの短いインタビューライター経験で培った結果のベストスタイルなので、合わない部分は自身でアップデートしてもらえればと思う。参考までにどうぞ。ただ、「言葉の解像度を上げる」ことに注力するのは、全力で推奨したい。

Photo by quan le, rawpixe, Justin Aikin, Michael Maasen, Álvaro Serrano on Unsplash

ABOUTこの記事をかいた人

文筆家/編集者。犬派、邦画派。相対性理論/やくしまるえつこ愛。人文書、哲学書、文学あたりを好んで読む活字中毒。レトロゲームから現行機種まで幅ひろく遊ぶゲーマー。竜退治はもう飽きた。