スケジュール帳は、2週間くらいがちょうどいい。

2月のテーマ記事は「暦」

当メディア「Chiken」の編集鳥(誤字ではない)から、突然指令が下った。「暦」を題材に記事を書けということだ。

編集鳥(@Chiken_editor)が言うには、「Chikenは書き手の挑戦がテーマのメディアだけど、どうしても自分が得意だったり興味のあることばっかりを執筆しがちになる。それはよくない。月イチでお題を出すから、それに基づく記事を書きなさいよ、あなたたち」ということらしい。

なるほど。で、今月のテーマは「暦」になったということか。

これはまた唐突なテーマだ……と一瞬脳裏に浮かんだが、よく考えたら平成という元号は来年の4月30日で終わってしまうし、今上天皇の生前退位も含め何かと話題になっていることからも、「暦」とはおもしろいテーマ設定だと納得する。

暦(こよみ)の語義・語源をたどる

自分の知らない分野を調べるときは、まず語義・語源を知ることから始める。デマやウソの多いウィキペディアではなく、事典・辞典など信頼のおけるメディアを活用した方がいいと個人的には思う。

※ここから辞書的な内容が続くので、興味のない人は次の見出しまでジャンプを推奨

さて、ブリタニカ国際大百科事典によると、

「暦」とは「1日を単位として数えることにより,週,月,年と時間を分割した体系,また,この体系の基礎となる天体の知識,年間の予知すべき事項を記載したものをいう」

となっている。

月の公転周期(29.531日)を採用した太陰暦と、地球の公転周期(365.242日)を採用した太陽暦、併用したものを太陰太陽暦と呼ぶのは多くの人が知っているはず。

日本では602年に百済より伝わった中国歴や、1684年に制定された貞享暦などの太陰太陽暦が使われていたが、明治5年に太陽暦の一種であるグレゴリオ暦が採用され、現在に至っている。

ちなみに白川静の常用字解によると、「暦」には戦争で立てた手柄を表彰するという意味があるそうだ。由来を共にする漢字の「歴」には記録の意味があるし、何より「歴史」とは戦果の物語でもあるから、実に納得がいく。

話がやや逸れるが、この常用字解は言葉に携わる仕事をしている人にとって必携の字書だと思っている。

言葉の使われ方としての由来だけではなく、表意文字(表語文字とも)の漢字はその成り立ちを知った方が、より理解が進むと確信しているので。

現代人に最も身近な暦とは?

「暦」というと堅苦しいが、自分たち現代人にとってもっとも身近な暦といえばきっとカレンダーだろう。

日々のスケジュールを管理しなければならない社会人や学生はもちろんだし、紙にしろスマホにしろカレンダーに関するツールを使っていない人はいないはずだ。

ちなみに自分は紙文具に目がなく、これまでいろんな種類のノートや手帳を使ってきた。もちろんスケジュール帳も。

うん、これだ。

今回のテーマ「暦」について、自分はスケジュール帳を切り口に語っていこう。

これまでどんなスケジュール帳を使ってきたか、自分に合ったスケジュール帳をいかにして選ぶのか。そして20数年、紙のスケジュール帳とケンカしながらもうまく付き合ってきたひとりの紙愛好者は、いまどんな手帳を愛用しているのか。断片的なエピソードから、自分にとってぴったりのスケジュール帳って何だろうと想いを馳せてもらえばと思う。

紙のスケジュール帳こそが神である

この記事を読んでいる人は、スケジュール管理に何を使っているのだろうか。最近はスマホアプリも充実しているから全部アプリでやってるよーという人もいるだろうし、会社でGoogleカレンダー使ってるからいつの間にかプライベートも一元化しちゃってる、なんて人もいると思う。

しかし自分は、相も変わらず紙のスケジュール帳を使っている。スマホが流行り始めたころは、時代の波に乗って「これからは電子スケジュール帳だ!」なんて浮気をしたこともあったが、結局元サヤだ。やっぱり紙はいい。

とはいえ、この記事で、紙VS電子のバトルを繰り広げるつもりは毛頭ない。こういった不毛な争いは、データをクラウドで管理するのが日常になった頃から盛んに行われているが、決着などつくはずもない。そもそも勝者を決めて敗者を滅ぼさないといけないわけではないし、結局のところ住み分けることで折り合いはつく。

スケジュールアプリが自分に合うなら使えばいいし、どうしても紙じゃないとうまく管理できないなら紙を使えばいい。それだけの話だと思う。

スケジュールには温度を宿したい

ちなみに一応、自分なりに「紙の方が合っているな」と感じる理由はある。自分で書いた言葉には魂が宿っているという、ちょっとうさんくさい理由だ。

同じフォント、同じ文字、同じ並び、同じ行間、同じ色、同じ大きさ……電子化されたスケジュールはじつに規則正しい。それだけに、温度が感じられない。

スケジュールを書くとき、すべての項目が同じ温度感であるはずがない。早急なら早急なことが、大事なら大事なことが、仕方なしにやることならどうでもいい感が、文章には現れる。

それらをキレイなフォーマットで並べると、自分の中でスケジュールが死んでいく。無機質な文字に囲まれていると自分の感性も死んでいく。そんな感覚に耐えられなくなり、自分はスケジュールをアプリで管理するのをやめた。

この感覚を人に伝えるのは非常に難しく、これまでも難儀してきた。そしてあるとき気づいた。「何でこの感覚を人に共感してもらわないといけないのか」。そりゃそうだ。

5冊の手帳を平行して使い、自分に合うタイプを見つける

さて、そろそろ本題へ。

紙のスケジュール帳といっても中身はさまざま。ページごとの日数で分けるなら、デイリー、ウィークリー、マンスリー。1日を縦型のタイムラインにしたバーチカル式と、左にスケジュール右にフリースペースのレフト式など。

自分に合ったスケジュール帳はどれなのか分からず、手帳ジプシーになっている人も多いと聞く。こればっかりは試してもらう他ないので、失敗覚悟でいろいろ使ってみてもらいたい。

ちなみに自分は、年末に5冊ほどの手帳を書い、平行して使いながら今の自分にもっとも相応しいのはどれかを吟味して選ぶようにしていた。今は自分に相応しい手帳が見つかったのでジプシーを卒業している。

「紙の手帳はどうも合わなくて…」と嘆く人によく出会うが、案外自分に合う手帳が見つかっていないだけなんじゃないかと思う。手帳は想像以上にいろんなタイプがあるので、どこかに必ず合う1冊がある。いつ出会えるか、保証はできないけれど。

「ほぼ日手帳を使っている自分」が好きなだけだった

社会人になっておよそ10年、ずっとほぼ日手帳を使ってきた。

ご存知のとおり、ほぼ日手帳はデイリーだ。毎日書くことがあってたまらないという人にはぴったりだろうが、逆に「何か書くこと見つけないと…」「書かないと真っ白なままになっちゃう」と焦り戸惑うタイプの人には向いていない。

その10年、自分が後者のタイプだと気づかなかった。正確には気づかないフリをしていた。もっと言うなら、ほぼ日手帳が好きな自分に酔っていたんだと思う。こうして11年目に、自分はほぼ日手帳をやめた。

自分のスケジュールはデイリーで管理しなければならない類のものではない。かといってマンスリーでは幅が広すぎる。長年にわたるほぼ日手帳をやめたことで、本当に自分が求める機能についてわかってきた。となれば、手にするのはウィークリーしかない。こうして自分に合うウィークリー手帳を探し求める旅が始まった。

例のごとく5冊ほどのウィークリー手帳を書い、平行して使い始める。「これは違うな…」「これもなんか合わない…」。自分に合う手帳はなかなか見つからず、2年が過ぎた。そうして訪れた2017年の冬、自分はついに運命の手帳に出会う。

スケジュール帳は、2週間くらいがちょうどいい

アートディレクターとして名を馳せる寄藤文平氏が手がけた手帳「yPad」。もうこの手帳なしでは生きていけないほどに、自分の人生にフィットしてしまった。

名前のとおり、大きさはappleのiPadと同じくらい。手帳としてはめずらしい横型で、そのまま左にめくっていくのが特徴。

左側は2週間分のスケジュールが縦に並び、1時間刻みのデイリースケジュールは横向きのバーチカルに(この言葉、何か変なのはわかっているが、どう言い換えていいかわからず)。

右側はスケジュールと連動しながら、バーチカルなスペースが。

これは自分のように複数のプロジェクトを抱えながら日々仕事をしている人にはぴったりの仕様。

大きな紙面に温度の宿った言葉を書き込んでいくことで、無味乾燥なスケジュール管理帳ではなくなるはず。何せ、開くのが楽しくなるのだから。

2週間分のスケジュールページをめくると、方眼のメモ欄が顔をのぞかせる。スケジュールを立てながらちょっとしたメモを残しておくのに相応しい広さだ。これがあるのとないのとでは、使い心地がずいぶん変わるだろう。

他の手帳類とは見た目も中身も違うため、使い方がわからず戸惑うかもしれない。実際自分は非常に困った。

だが、冒頭に寄藤文平氏自ら描いた使用見本が載っているので安心してほしい。これにはかなり助けられた。元々クリエイターのためにつくられた仕様であるため、著名クリエイターたる本人が一番ほしかった要素を詰め込んでいるのだと思う。

使ってみて感じたのは、「1ページに2週間」という単位がちょうどいいということ。自分の携わる仕事から、デイリーでは刹那的、ウィークリーでは成果で見えず、マンスリーではスパンが長すぎるという悩みがあったが、2週間という単位はそれらを全て払拭するベストなスパンであったことがわかった。

つまり、こうも言い換えることができる。自分にとって、たいていのことは2週間あれば何とかなる。

手帳を選ぶのにコツも何もないとは思うが、選び方のひとつとして「自分の時間感覚」をベースにスケジュールを立てるなら、どういうフォーマットがいいかを意識するといいかもしれない。これを機に紙の手帳にチャレンジする人が増えてくれると嬉しいし、「ypadが大好き!」な人がいたらメッセージをぜひ。

 

 

ちなみに、「ほぼ日5年手帳」は今年から愛用している。ほぼ日手帳の仕様は、連用日記には最適だから。

ABOUTこの記事をかいた人

文筆家/編集者。犬派、邦画派。相対性理論/やくしまるえつこ愛。人文書、哲学書、文学あたりを好んで読む活字中毒。レトロゲームから現行機種まで幅ひろく遊ぶゲーマー。竜退治はもう飽きた。