ライターも編集者も、安心したい。

先日とある企業の方と名刺交換をさせてもらったときに、
「前職ではなんの仕事をしていたんですか?」
と聞かれてキョトンとした。

たしかに考えてみれば、フリーランスのライター・編集者のなかには、異業種転向をした人が多い気もする。

そんな中、幸か不幸か、わたしは社会人になってから編集やライティング以外の仕事をしたことがない。

だから今回「ライター業界の人間関係」というお題が出たときに、そもそもこの業界って特殊なんだろうか?との疑問が出てきてしまった。

ライターや編集者のこと「ギョウカイジン」て、たまに言うじゃないですか?正直ピンとこないんです。

カフェのお姉さんは飲食業界のギョウカイジンだし、プログラマーさんはIT業界のギョウカイジンじゃん。

ていうかそもそも、編集やライティングの仕事をしていると必然的に名前が表に出やすいだけで、中身は職人仕事みたいなもんだったりするよと思う。

外から見てこの業界にいる人たちをギョウカイジンと呼びたくなるのであれば、やはり人間関係も特殊ってことになるのかな。

個々人の付き合いで仕事が広がる世界

他業界を知らない私なりに、ライターを取り巻く人間関係について考えてみた。

そうなると必然的に、編集者との関係性の話になる。

ひとつ思い当たるのが、そもそもこの仕事はすごく属人的になっているんじゃないか。ってこと。

もともと、ライターや編集者にはフリーランスの人がめちゃくちゃ多い。
仕事をお願いする時に、「あの会社に」ではなく「あの人に」と考えることがほとんどなのだ。

たとえその人が会社に属していても、「◯◯社の△△さんに」といったカタチで仕事が飛んでくる。

△△さんが転職したら、その案件ごとなくなるなんてこともしばしば。

なんでそうなるかというと、私たちはひとえに安心したいからなんじゃないかな。と思う。

それが、ライター(編集)業界の人間関係を形成してるのではないだろうか。

だって、記事を作るという仕事には資格や明確なランク分けになる評価軸がない。
そして、いい文章やいい記事に対する解もない。
すごくあいまいなことが多くて困る。

だから、「こんな感じでいつものようにお願いします!!」で完結できる人同士で仕事が回りやすい。

人づてで仕事が増えることがとてもとても多い世界なのだ。

初めてお仕事をする人とでも、必ずと言っていいほど共通の知り合いがいる。

それが俗に言う「コネ」とか「内輪感」といったイメージにつながるのかもしれない。

ライター業界の内輪感てなんかムズムズしますよね。
そういうのあんまり好きじゃないけど、でも多分、私もそのなかの一部分なんだと思う。

信頼できる人といい仕事をしたいと思うのは、みんないっしょだ。

安心して、いいものをつくりたい

よく「いいライターさんとは?」みたいな話になると、多くの編集者が「前提として、飛ばない人」と言う。

そもそも、「飛ぶ」ってどういうことか分かるでしょうか。

私はかつて、結構な量の記事制作をお願いしていたベテランのフリーライターさんに「飛ばれた」ことがある。

ある日突然、脈絡もなく音信不通になってしまったのだ。

確かに、納期的にも原稿料的にも苦い案件だった。そのライターさんの中で私のお願いしていた仕事は優先度が低くて、きっと他に条件のいい仕事が舞い込んできたのでしょう。

とはいえ締め切りは待ってくれない。

新人編プロ社員だった私は、飛んだライターさんが書いてくれるはずだった分の記事を泣きながら書いた。超辛かった。

それからというもの、信頼できる人と仕事をしたいと強く思うようになったし、自分もそうありたいと心に誓った。

安心して、いい記事を作りたいよ。

ライターって結構人間性が試される仕事なのかも

かく言う私もフリーランスになってみて、「うわぁ…これもう飛びたい…」と思ったことが何度かある。(ごめんなさい)

そこでカギとなるのが、人間関係です。

飛びたいと思うときの原因は、原稿料の安さや納期の短さじゃない。
いちばんは、仕事をくれた相手への不信感だったりする。

どうしてそんなこと言われなきゃいけないんだろう?
そんなに雑な指示じゃイメージ通りに書けないよ。
これって私の仕事じゃなくない?

などなど…

ただ、もちろん反対もある。

仕事をしやすくするささやかな配慮や、ふとした言葉のていねいさ。
自信を持たせてくれるような気配り…とか

一緒にいいものを作りたい、と言う気持ちが見える人となら、多少きつい仕事でもネタみたいにしながら頑張れる。

ライターから見た編集者だけじゃなく、編集者から見たライターでも同様だ。

これってでも、人間関係の本質だなと思うのです。

個を武器にしている人が多いライターの世界だからこそ、スキル以前に「人」を見られている気がしてならない。

その証拠に、いいライターさんや編集者さんは、なんとなくコミュニティが固まりがちだ。

いい人間関係のために「与える」こと

売れっ子のライター・編集者さんとお仕事をさせてもらうと、本当にいい人で、仕事もできて、感動することが多い。

売れっ子だから仕事ができるのではなく、仕事ができるから売れっ子になるんだろうなと改めて思う。

求められたかったら与えること。

そういう意味で、ライター業界での人間関係は、とってもシンプルなんだと思う。
でもさ、これってどの業界でも結局一緒なんじゃないかな、とも。

ABOUTこの記事をかいた人

ライター・編集者。1991年うまれ。出版系の制作会社に入社後、2015年からフリーランスに。雑誌やweb媒体を中心に記事の執筆・編集を行っている。日本のものが好きすぎて、顔がこけしに似ていることをオイシイと思っているふしがある。