自分を育ててくれるボスと出会えるかで、ライターの人生は決まる

いつの間にか恒例となった、編集鳥(誤字ではない)から下される『今月のお題』。3月のテーマは「ライター業界の人間関係」だそう。

うちのボスはいきなりぶっ込んだことを言ってくるから困る。

「ライター業界」ってなに?

ライター業界…。うーん、ライター業界…?
そんなもの、存在するんだろうか?

思えばモノ書きとして働きはじめて約5年。フリーランスだったり正社員雇用だったりと働く形態は変われど、ライター業界なるものに属している気がしない。

メディアやコンテンツメーカーに直接自分を売り込みに行ったり、ハナからモノ書きとして働ける会社を探して面接に行ったりしてきたけれど、大抵の場合、抱えているライターはひとりかふたり。

しかも専任ではなく、何か別の仕事を掛け持ちでしている人が多かった。つまり、専業ライターの人と出会う機会がほとんどないままで、これまでやってこれた。

いま勤めている会社も一応メディア運営事業を営んでいるが、入社当時の肩書がライターだったのは自分だけ。

編集プロダクションに勤めたり、紙Web問わず大きなメディアでライターとして関わっていたなら、ひょっとすると書き手のグループみたいなものに関わることができたのかもしれないなぁと、ふと思う。

そんな待ちの姿勢では出会えなくとも、孤軍奮闘しているライターたちに声をかければ、つながりを生むことはできると分かってはいるけれど。

カネの話しかしないブロガーが嫌い

なぜ他のライターとつながろうとしないのか?そんなことについて思いを馳せてみると、明らかな原因にたどり着いた。

今は昔、自分がしがないブロガーだった頃の話。

ブロガーはライターよりも孤独な生きものだからか、オフ会や勉強会といったイベントをよく開いている。そんな中、かなり大きなフェス的イベントが開催され、知り合いに誘われるかたちで参加したことがある。

自分が書いているモノへの愛情や、込めたアツい想いをぶつけ合うんだろうと思ってワクワクしながら足を運んだが、そこで交わされているのはカネの話ばかりだった。

    「アフィリエイトで稼げるブログのつくりかた」
    「1ヶ月で100万円を稼ぎだすブログの運営マニュアル」
    「クラウドライターを使って1日30本更新!毎月確実に10万円入ってくるブログのヒミツ公開!」

別にカネの話がダメなわけじゃない。自分も以前はブログにアフィリエイト広告を貼っていたし、執筆した書評から書籍の購入につながったりするとやっぱり嬉しいものだし。

だけど、そのイベントに来ていたブロガーから文章への愛はまったく感じられなかったし、コンテンツ=金ヅルとしてしか見ていなかったように思う。それからもお誘いを受けることはあったが、次第に足は遠のき、村文化の強いはてなブログのコミュニティからも脱出した。

ブロガーとライターが別の生きものだと分かっているし、商業ライターになった今は、ライターの集まりに顔を出してもそんなことにはならないと思う。しかし、あのイベント以来、モノ書きという人種をあまり肯定的に見ていないこともあって、積極的につながろうとしないところがある。

自分もモノ書きなのに、因果なものだねぇ。

ライターは、とてもめんどくさい生きもの

ちなみに自分は、編集者やコンテンツマネージャーなど、自分のコンテンツをきちんと見てくれたり腕を買ってくれる人、そして育てようと思ってくれる人とのつながりはとても大事にしている。そんな人がボスだったらもっと最高だ。仕事したい/育てたいと思ってもらえるんだから、その関係を大切にするのは当たり前だと思う。

でも、自分は働く上での人間関係をできるだけシンプルなかたちにしたい、という思いでモノ書きをしているので、無理につき合う人を増やしたくはない。特に、ライターってとてもめんどくさい生きものだから、つき合う際は気をつけている。

かなりディフォルメして表現するけれど。ライターって単純におかしい人が多い。「おかしい」にもいろいろあって、トンガッているとかクレイジーだとか、吹っ切れている人はおもしろいし、そういう人が書くモノも大抵おもしろい。

問題は、一般的なビジネスマナーを守れない人。これは自分が編集の立場になって初めて思ったことだけど、とにかく納期を守らない人が多い。あと報連相をしない人も。真実のところはともかく、締め切り前に突然失踪したり、定期的に祖父母を亡くしたりもする。

ライターってどこでもできるのがウリの仕事だから、納期を守れない理由も必然的に重くなる傾向がある。交通事故も両手骨折になるし、何かと腕のトラブルが多い。だからか、逆を言えば納期をきっちり守るだけでずいぶん信頼される仕事でもある。

そういった意味でも、かなり世間ズレした仕事だと思う。

無理にライターフレンズをつくらなくても、自分を認めてくれるボスを見つけられたらそれなりにやっていける。まぁ、そのボスを見つけるのが大変なんだけど。オレのボスはどこだ?

…こんな自分の首を絞めるようなことを言っていいものか。ちょっと震えるけど、まぁこれも自分を戒めるためだと思って綴ってみた。

そんな自分が、「ライター業界の人間関係」について言えること。

ひとつ、自分のアウトプットに価値を感じ、育てようとしてくれる人を大切にする。
ふたつ、不義理ライターには気をつけろ。

今日言いたいことはそれくらいです。

※トップの画像はダ鳥獣ギ画様よりお借りしました。

ABOUTこの記事をかいた人

文筆家/編集者。犬派、邦画派。相対性理論/やくしまるえつこ愛。人文書、哲学書、文学あたりを好んで読む活字中毒。レトロゲームから現行機種まで幅ひろく遊ぶゲーマー。竜退治はもう飽きた。