立ち上がれ、ひよっこライターず

社会人最初のキャリアがライターの人って、どれくらいいるんだろう?

極めて少ないと思うけど、だからこそかなりマイノリティを感じているんじゃないでしょうか。それと同時にひょっとしたらちょっとだけ、得意げになっているかもしれません。

「自分は他の友達と違って、好きを仕事にしたんだぜ」とか。
5年前の私がそうであったように。

でも気をつけて。眠い目をこすりながら頑張っているあなたのことは応援するけど、「たたき上げ」って、人が社会で育っていくうえでかなり危険です。

きっと、周りの先輩たちはあなたをライターとしてきちんと育てようとしてくれるでしょう。
それでも、世間一般で言う「企業」に入った同世代とは、まったく異なる環境であなたは社会人になっている。

だからいつか、ぐらっと足元が不安定になる時期にぶつかります。
そうだなぁ、2年くらい前の私がそうであったように。

というのも我々ライターは、社会人としての常識があるだけで、業界内でかなり評価されます。
時としてそれは、アウトプットである文章のクオリティより重視されることも。
それが、どういうことを意味するかわかりますか…?

「ライターは社会性や常識があまりない」だなんてイメージを持たれたらたまったもんじゃありません。
私たちはだって、社会に揉まれて生きる多くの人たちに届けたいことがあって、この仕事を選んだんでしょう?

かなり読者が限られてしまうことは承知ですが、今回は新社会人ライターの皆さんに向けた記事を書かせてもらいます。

あのころの私が読んでおくべきだった2冊と、ライターとしてブレないためのちょっとしたアドバイスができればいいな。

きっと同期が少ないでしょう?でも大丈夫。

きっとあなたには、同期と呼べる存在があんまりいないはず。
久しぶりに会った大学時代の友達が、「このまえ同期と飲みに行ってさ」なんて話すのを少しだけ羨んだりするかもしれない。

初めての環境で、同じ立場にいて、ささやかな不安を分かち合える存在がいないのは、とっても心細い。

会社での立ち居振る舞いが分からなくって、でも「こんなこと先輩に聞いていいのかな…」なんて考えているうちに時間が過ぎてることもあるんじゃない?

ましてや、この時代だから最初からフリーランスの道を選んだツワモノもいるでしょう。
そんなあなたは、正解がわからずに真っ暗闇にひとりぽつんと立ち止まっているような気持ちになって泣きそうなこともあるかもしれない。

そんなときに指針にしてほしいのは、この本です。

入社1年目の教科書

『入社1年目の教科書』岩瀬大輔(ダイヤモンド社)

ライフネット生命の副社長である岩瀬大輔さんの著書。
内容は決して目新しいものではないけれど、輝かしい経歴を持っている岩瀬さんでさえ、心がけていたのはごくごく基本的なことだというのを教えてくれます。

新人が仕事をする中で大切にすべき「仕事の3つの原則」と50の具体的な行動指針がまとまっていて、「なぜ働くのか」や、「どうすれば上手く仕事が回るのか」が見えてくる。

ネタばらしをすると、私はフリーランスなりたての頃に、仕事でよくお世話になってる人に「お前はまずこれを読め!」とめっちゃ言われました(笑)

超悔しかったけどそれくらいダメなライターだったので(今もいいライターとは自信持っていえないけど)、どうかあなたは今のうちに読んでおいてください。

はがきサイズの「仕事の原則チェックシート」も付いていて、ふとした時に本の内容を振り返ることができます。
仕事用のクリアファイルや読みかけの本に挟んでおくといいかも。

先輩に頼りすぎてはだめ、自分で正解を探そう

とは言えあなたはライターだから、ライターとしての仕事ができる人にならないといけないですよね。

ライターなんて名乗ったもんがちだし、インタビュー記事だって、人の話を聞けて文字を書ければ記事自体はできるかもしれない。

だけど

「それで、本当に伝わりますか?」

こんなドキリとする問いかけが本の帯になっているのがこちら。

書いて生きていく プロ文章論

『書いて生きていく プロ文章論 』上坂徹(ミシマ社)

ライターさんによって、仕事の進め方はさまざま。
あなたに先輩がいるのなら、やり方をいろいろアドバイスしてくれるかもしれない。
でも、その方法があなたに合っているのかを判断するのは、あなたです。

いいものを作れない限り「私はこう教わったもん」は、通用しない。
もちろん、教えてもらったことはしっかり吸収するべきだけど、それだけを鵜呑みにしていたら、せっかくの自由な職業がもったいないよ。先輩のことなんか超えてしまえ。

ということで、新卒ライターさんにはぜっっっったいにこの本を読んでほしいです。

なんてったってタイトルがかっこいい。「書いて生きていく」って、まさにその決断をしたあなたの背中を押してくれるみたいなことばじゃない?

数多くのベストセラーを手がけてきた上阪徹さんのインタビュー術や記事の書き方、ライターとしてのコミュニケーションの仕方や仕事の広げ方などなどなどなど…

断言していい。これぞ「ライター心得」です。

ライター業は現場で仕事を覚えていくようなものだから、仕事に慣れるまでは事あるごとにこの本を読んで予習するくらいがいいかも。

これが好きだ。を信じて

ここからは、ためになる本のお話はできないけれど、ライターとして生きていくことを決めたあなたへのエールを少々いいでしょうか。

迷いつつも、ジャンルを選ばず文章を書き続けたっていい。
そうじゃないと食べていけないし、その経験は絶対に無駄にはならない。

でも「いつかこの分野の専門ライターになりたい」と思うなら、自信を見失わないで。
あなたが「書きたい」と言い続ければ、それは必ず叶う。
ただし、大きく叶えるか小さいままにするかはあなた次第です。

小さく叶ったなら、それを育てる術(一般的にはブランディングとかっていうのかな)を身につけておこう。

それまで絶対に、「書きたい」の夢をあきらめないで。

プライドは、人知れず燃やしておけばいいよ

きっとあなたはプライドが高い。そうじゃなきゃ社会に出て最初からライターの仕事しようなんて思わないもんね。

自分の意志に正直に、危険を顧みず前に進んだあなたはとってもえらい。

でも、プライドの高さは人にバレないほうが何かと好都合みたいだよ。特に新人のうちは。

とある編集者さんが「編集とは、簡単にいえば文章にダメ出しをするのが仕事だ」と言っていたんだけど、だとすれば、私たちライターはダメ出しをされることも仕事の一部。

でも、それは怒られてる訳でもけなされてる訳でもないから、どうかヘコまないで。

私はこれまでライターしてきて、「プライド高そうだな」と思われてよかったことってあんまりなかった。

例えば記事を修正されて悔しかったり納得できなかったとしても、「ありがとう」と「ごめんなさい」と「がんばります」は絶対に忘れないで。

これは、あなたとお仕事をする人のギスギスを避けるためのお守りです。

泣かないで。立ち上がれ、ひよっこライターず

きっとあなたはすでに何度か、密かに涙を流したでしょう。

それは業界の理不尽さにかもしれないし、自分の未熟さにかもしれないけど、泣かないで。大丈夫。

困ったことがあったら手を貸すから、また立ち上がろう。
きっとあなたは、素敵なライターになれる。

ABOUTこの記事をかいた人

ライター・編集者。1991年うまれ。出版系の制作会社に入社後、2015年からフリーランスに。雑誌やweb媒体を中心に記事の執筆・編集を行っている。日本のものが好きすぎて、顔がこけしに似ていることをオイシイと思っているふしがある。